2008年「ひふの日」記念 市民公開講座
皮膚科医と考える 手と足のスキンケア 〜365日、調子のいい肌のために〜
皮膚の日市民公開講座 レポート
11月12日は、「皮膚の日」です。
「いいひふ」=「1112」の語呂合わせから、日本臨床皮膚科医会が制定しました。
皮膚の日に先立つ10月19日、秋晴れの中、市民公開講座が開催されました。今回のテーマは「皮膚科医と考える 手と足のスキンケア 〜365日調子のいい肌のために〜」。手や足は何気なく使用する部位ですが、その分皮膚の悩みも多いのか、開場と同時に多くの来場者がつめかけ、会場内はほぼ満席となりました。 |
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今回は、市民公開講座に先立ち、東京都皮膚科医会の先生方による「皮膚についての相談会」が行われ、開場後のホワイエでは、乾燥性敏感肌のスキンケア製品のディスプレイや、ミニステージにおけるハンドケアレクチャーが行われました。 |
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皮膚についての相談会
市民公開講座への参加を応募された方の中から、抽選で選ばれた方々が参加。設置された個別ブースで、先生方のアドバイスに熱心に耳を傾けられていました。 |
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ハンドケアミニレクチャー
参加者も実際にハンドクリームを手に取り、乾燥性敏感肌の方の手のお手入れ方法を実践。実際の塗り方や、ハンドケアのポイント、日常生活の中で注意する点などのレクチャーを受けました。 |
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スキンケア製品展示
ホワイエには、乾燥性敏感肌のためのスキンケア製品を展示。それぞれの肌の悩みに合った商品を実際に手にとって試していただきました。 |
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「皮膚の日について」
日本臨床皮膚科医会会長・浦安皮膚科院長 加藤 友衛 先生 |
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11月12日は皮膚の日です。皮膚のこと、皮膚の健康、皮膚の病気について正しく知ってもらいたいという目的で始まりました。皮膚の日前後には、全国で講演会や無料相談、無料健診を行っています。
皮膚について基本となることは、外から化学物質や細菌が身体の中に入ったり、水分を喪失するのを防ぐという大切な役割があるということです。一番下の層にある基底細胞が分裂をして保湿に重要な天然保湿因子NMFやセラミドをつくりながら外側の角層を形成しています。
その大事な役目を果たしている角層はごしごしこすったりせず、大事にしていただきたい。
普段、身体の中で一番働いている手足の皮膚ケアはおろそかになりがちかもしれません。本日はじっくりお聴きいただいて、明日からの生活に役立てていただけたら幸いです。 |
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「手足の病気とケア」
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野 教授 横関 博雄先生 |
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手足の皮膚は、普通の皮膚と違い、「表皮が非常に厚い」「手のひら、足の裏に毛の器官や脂腺が無い」「汗の腺、汗腺が非常に多い」という特徴があります。
皮膚は、外からの異物をブロックし、光線を遮断する役割を持つ表皮、外界の物理的な刺激から体を守る真皮、皮下組織である脂肪組織の三つの構造でできていて、生体内部の保護、栄養や水分の代謝と調整、発汗による体温調節、紫外線からの防御、さらに異物・微生物の侵入に対する免疫的な防御などさまざまな役割を果たしています。
手のひら、足の裏は、どちらも毛穴が無く、皮脂腺、角層中の脂質、特にセラミドといったものがない状態なので、洗った後には出来る限りまめに保湿剤を補給することが必要です。
手足の皮膚に見られる病気には、主婦湿疹とも呼ぶ「手荒れ」、お年寄りに見られる「皮脂欠乏性皮膚炎」。足に見られる水虫や胼胝(タコ)、深爪、手足のほくろの癌などがあります。
こうした病気を予防するには、清潔のケアと乾燥のケアを両立させることが大切です。
私たちの大学では、フットケアを中心とした外来をやっています。足浴、湿布、爪の変形の治療と手入れ、足の形に合った靴、中敷きのインソールを作ったり、サイズに合った靴の指導などを通じ、実際に足の機能が改善するということがわかっています。魚の目、たこ、爪の変化、病気、外反母趾などは、ただの変形ではなく、足の機能の低下につながることを知っていただきたいと思います。
足をよく観察していただく、たこや魚の目があれば専門家に治療していただく。水虫にならないよう通気性のよいサンダルをはく。外反母趾をまねくハイヒールはできる限り避ける。足にあった履物。深爪しないように注意し、適度な運動を心掛けることです。 |
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「手のスキンケア」
東芝病院皮膚科科長 服部 尚子先生 |
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手荒れなど、外来でよく見られる手湿疹の多くは、手の洗い過ぎや、強い洗剤を素手で使って起きた症状が繰り返されることで重症化するケースです。手湿疹は長年患うと手の皮膚が厚くなり、冬の乾燥で硬くなり、曲げると割れるなどの症状も見られます。アトピー性皮膚炎の方も重症になりやすいので注意が必要です。
では実際どうスキンケアをするか。やはり普段の生活で手に刺激となることは避けることが大切です。例えば、水仕事の際は手袋をする、刺激の強い石鹸は使わないといったことです。洗剤や野菜の汁がついたら必ず洗い直して、その後保湿剤でしっかりと保湿をします。
皮膚科では軟膏を出されることが多いと思います。べたべたするので気にする方もいますが、軟膏の脂成分は刺激が少なく、皮膚が弱っているときには一番良いのです。延びの良いクリームや液剤は使用感がよい一方、軟膏に比べると浸透するかわりに保護しきれないのが欠点です。最近ではテープ剤も出ています。擦れて外れることが少ない点が良いところです。薬局でも選ぶ際参考にしていただければと思います。
夏と冬では手を取り巻く状況は少し違います。冬、水仕事に使うお湯は石鹸を使わなくても脂を落とす作用が強いので、そこへさらに洗剤を素手で使うってしまうため、手荒れになりやすいのです。夏は夏で手が蒸れやすく、手袋を使わず家事をして荒れてしまうことがある。常に言えることは手を清潔に保ち、ハンドクリームなどで保湿をしっかりして、家事などのときに手袋をしていただくことです。
手の水虫、カビの一種のカンジダ、リウマチや遺伝性の疾患など手荒れ以外にも色々な手の病気があります。「これは湿疹かな」というものでも、別の病気ということがありますので、何か違うなと気づくことがあったらぜひ皮膚科に行っていただきたいと思います。 |
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総合討論 |
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講演の後は、事前に参加者の皆さまから寄せられた質問にお答えするQ&Aの時間です。総合司会は日本臨床皮膚科医会常任理事小林美咲先生。講演された先生方に、「手や足のケア」に関するさまざまな疑問や悩みにお答えいただきました。 |
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Qささくれができて、毎年悩まされています。予防法はありますか? |
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服部先生
手洗いをしたときにハンドクリームを塗る習慣があっても、指先、爪先までしっかり塗っていない方は多いと思います。しっかり指先までクリームを塗ってケアしてください。それから、指先の刺激になることはしないことです。 |
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小林先生
クリームを塗らない場合もあると思うので、手を拭くようにとよく患者さんにアドバイスしています。手を濡れたままにすると、水と一緒に角層の水分も蒸発して乾燥してしまいます。手が濡れたら、指1本ずつ水気を拭き取ることが大切です。
Q季節の変わり目に手足が荒れ、かさかさします。乾燥を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?
横関先生
その時期にあった保湿剤の補給が重要です。ローション、軟膏、クリームなどを、手洗いや入浴の後、まめに塗ってください。その後、手袋や靴下をするといっそう保湿でき、効果的です。冬場はお湯をよく使うので皮膚の中の脂、皮脂は取れやすくなります。補給する意味でも、皮脂に近い油分を含んだもので対応すると良いと思います。
Q「あかすり」の効用はありますか? |
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加藤先生
皮脂膜や角質細胞の外側を削るということは、一番大事なバリア機能を壊すことになります。外から有害なものが侵入しやすく、皮膚の水分も失われやすくなります。効用どころか、バリア機能を壊すだけなど、逆に皮膚の大事な機能を壊してしまいますのでやめたほうが良いでしょう。
横関先生
高齢になると“新陳代謝が遅れるから、あかすりは肌の健康に良い”と信じている方が多いようです。しかし角層のバリア機能を除くとむしろ抵抗力が低下してしまいます。効用より弊害が大きく、健康法にはならないと考えていただきたいですね。特に小さなお子さんやご年配の方は特に皮膚が薄いので、おやめになったほうが良いと思います。
Q手指の爪の先端が割れて2枚爪になってしまいます。対処法はありますか? |
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横関先生
皮膚の角層の一部が固くなったのが爪です。爪が割れる原因の1つは老化です。そして爪の水分がなくなり、角層の中に雑菌、真菌、かびが入るということもあります。保湿剤をつけて手袋をするなどして保湿することを心がけてください。それでも爪が割れやすい方は、皮膚科に行って治療されることをおすすめします。
加藤先生
ネイルアートの強い接着剤やマニキュアを取り除く除光液などは、指先の刺激になります。爪をひっかけることで、割れの原因にもなっているようです。爪の割れに関していえば原因にもなるので、気をつけるというよりやらない方が良いといえます。 |
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